中小企業のAI活用、何から始める?ツール選びより先に行う「7日間の業務棚卸し」
こんにちは。株式会社inadog代表の稲田敦です。
この記事の結論
- 最初に選ぶべきなのは、AIツールではありません。
- 7日間だけ、仕事を4項目で記録します。
- AIに任せる仕事は、最初は一つだけ選びます。
「AIを仕事に使ってみたい。でも、何から始めればいいのか分からない」
「ChatGPTは触ったことがあるけれど、実際の仕事ではうまく使えていない」
このように感じている中小企業の経営者や個人事業主の方は、少なくないと思います。
新しいAIサービスは次々に登場します。文章を作るAI、画像を作るAI、動画を作るAI、会議をまとめるAI。便利そうなものが多すぎて、どれを選べばよいのか迷ってしまいます。
けれど、私が自分の会社でAI活用を続けてきて感じているのは、最初に選ぶべきなのはAIツールではないということです。
最初に行うべきなのは、自分が毎日どんな仕事をしていて、その仕事にどれだけ時間がかかっているのかを知ることです。
そこで今回は、AIを導入する前に行いたい「7日間の業務棚卸し」を紹介します。
私の仕事は、1本約6時間から約70分になりました
株式会社inadogの実績(動画1本あたりの本人作業)
以前約6時間 → 現在約70分
月30本の場合の概算 約180時間 → 約35時間 月約145時間の短縮
数字は株式会社inadogにおける代表本人の実績で、概算です。業務の内容やAIの使い方によって結果は変わるため、同じ効果を保証するものではありません。
まず、株式会社inadogで実際に起きた変化をお話しします。
弊社では、歴史系のYouTubeチャンネルを運営しています。以前は、動画を1本作って公開準備まで進めるために、私自身の作業時間が正味で約6時間かかっていました。
企画を考え、原稿を準備し、画像や動画編集の工程を管理し、間違いがないか確認し、投稿できる状態に整える。動画を一本作るまでには、表からは見えにくいたくさんの仕事があります。
現在は、AIと役割を分けながら工程を作り直し、私自身の作業時間は1本あたり約70分になりました。
月に30本を作る場合の概算では、以前は約180時間必要だった本人作業が約35時間となり、月約145時間を短縮した計算になります。
これは、AIのボタンを一つ押したら、すべてが自動で完成したという話ではありません。
AIには、原稿・画像・動画編集の準備、作業の整理、複数の観点からの検品などを担当させています。一方、テーマを決めること、史実や品質を最終確認すること、実際に公開してよいか判断することは、人が担当します。
AIが準備し、人が責任を持って決める。
この役割分担を作れたことが、時間短縮につながりました。
なお、ここで紹介した数字は、株式会社inadogにおける私本人の実績です。業務の内容やAIの使い方によって結果は変わるため、同じ効果を保証するものではありません。
なぜ、AIツール選びから始めないのか
AI活用というと、「どのAIが一番優秀ですか」「有料版へ入った方がいいですか」といった話から始まりがちです。
もちろん、道具選びも必要です。しかし、先に道具を決めると、そのAIでできることへ仕事を無理に合わせてしまうことがあります。
先に確認したいのは、次のような仕事です。
- 毎週、毎月、繰り返している仕事
- 過去の資料やメールを探す時間が長い仕事
- 同じ内容を別の書式へ何度も転記している仕事
- 文章の下書きや要約に時間がかかる仕事
- 間違いがないか何度も確認している仕事
- 社長や特定の担当者のところで作業が集中している仕事
こうした具体的な仕事が分かってから、「この部分ならAIが手伝えるのではないか」と考えます。
AIを使うことが目的ではありません。今の仕事を少し楽にし、短縮できた時間を、お客様への対応や品質の確認、新しい仕事の準備へ使うことが目的です。
7日間、仕事を4項目で記録する
業務棚卸しと聞くと、大がかりな表や立派な日報が必要だと思うかもしれません。
最初は、そこまで細かくしなくて大丈夫です。7日間だけ、仕事を一つ終えるたびに次の4項目を記録します。
| 記録すること | 記入例 |
|---|---|
| 1やった仕事 | 打ち合わせ後のお客様への連絡 |
| 2かかった時間 | 25分 |
| 3何に困ったか | 過去の約束を探すのに時間がかかった |
| 4AIに手伝ってほしいこと | 過去の記録から返信案と次のToDoを整理してほしい |
正確に1分単位で測る必要はありません。まずは10分、30分、1時間といった概算で構いません。
大切なのは、作業時間だけでなく、次のような「見えにくい時間」も残すことです。
- 何から始めるか迷った時間
- 必要な資料を探した時間
- 相手に合わせて言葉を考えた時間
- 間違いが心配で確認を繰り返した時間
- 他の人からの返事を待ち、再開時に思い出した時間
経営者の忙しさは、目に見える作業だけでできているわけではありません。こうした小さな負担を記録すると、AIを役立てられる場所が見つけやすくなります。
すべてではなく、一つの仕事だけを選ぶ
7日分の記録ができても、全部を一度にAI化しようとしないでください。
最初に選ぶのは、一つの仕事だけです。次の4つを目安にします。
1繰り返し発生しているか
一度しか行わない仕事より、毎週・毎月繰り返す仕事の方が、やり方を整える意味があります。
2準備や確認に時間がかかっているか
資料探し、転記、下書き、要約など、一定の型がある作業はAIが手伝いやすい候補です。
3人が最終確認できるか
AIは間違えることがあります。まずは、AIの出力を人が確認でき、失敗してもすぐ元へ戻せる仕事から試します。
4生まれた時間を何に使うか
短縮できる時間が大きいだけで決めるのではなく、その時間をお客様対応、品質確認、営業、勉強などへ使えるかも考えます。
AIに任せる仕事と、人が決める仕事を分ける
業務棚卸しでは、「AIに何を任せるか」だけでなく、「人が何を持ち続けるか」も書いておくことが重要です。
準備AIが手伝いやすい仕事
例えば、AIが手伝いやすいのは次のような準備です。
- 会議記録から、決定事項とToDoを整理する
- 過去の資料をもとに、文章の下書きを作る
- 複数の案件から、今日やることを整理する
- 長い資料の要点を抜き出す
- 公開前の文章や制作物に、抜けや矛盾がないか確認する
最終判断人が責任を持って決める仕事
一方、次のような行為は、人が責任を持って判断する必要があります。
- お客様や取引先へ実際に送信する
- 料金や契約条件を決める
- 支払い、検収、評価を確定する
- ホームページやSNSへ公開する
- 相手との関係を踏まえて最終判断する
AIへ丸投げするのではなく、AIに準備を任せ、人が確認して決める。この線引きがあるからこそ、仕事で安心して使い続けられます。
まず今日、3つの仕事だけ書いてみてください
最初から7日分を完璧に記録しようとすると、続かないことがあります。
まずは今日行った仕事を3つだけ、紙やメモへ書いてみてください。
今日書くのは、この3つだけ
- 今日やった仕事、その1
- 今日やった仕事、その2
- 今日やった仕事、その3
それぞれに「やった仕事」「かかった時間」「何に困ったか」「AIに手伝ってほしいこと」を一行ずつ添えれば十分です。
「繰り返している仕事」「探す時間が長い仕事」「AIに準備を任せられそうな仕事」が一つでも見つかれば、AI活用の入口として十分です。
株式会社inadogでは、AIの機能を増やすことよりも、実際の仕事で使える状態を作ることを大切にしています。
何をAIに任せればよいか分からない方は、現在のお仕事から一緒に整理します。
無理にAIを導入するのではなく、本当に役に立つ場所があるかどうかから考えていきましょう。
AI活用について相談するお問い合わせフォームでは、相談種別「AI活用支援に関するご相談」をお選びください。




